ACTMENT PARK『あの鐘の音と共に ~THE BELL~』


 久しぶりのブログとなります。先日、東京まで豊永阿紀さん出演のミュージカル『あの鐘の音と共に ~THE BELL~』を観に行ってきました。とても素晴らしいミュージカルだったので、記録がてら感想を書いてみます。一応なんとなくネタバレがあります。

 

 

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 1年ぶりの東京でした。1年前は大人計画のミュージカル『パ・ラパパンパン』を観に行って、それも『クリスマスキャロル』をベースにした作品だったので、どうも自分はクリスマス大好きっぽいですね。

 

 なんだか年々クリスマスを好きになってきているんですよね。もういい歳だし、子供はいないのに、クリスマス時期の華やかな街の雰囲気に、自分もすべてを祝福したい気持ちが溢れてきます。ひねくれることなく、やっと素直になれてきたのかもしれません。

 

 クリスマスが好きなら、クリスマスを題材にした作品も好きです。なんだかんだ騒動が巻き起こっても、クリスマスだからと最後は大団円で終わるのが荒んだ心に優しく沁みわたります。それはなんだか誤魔化されたようでもあるのですが、いろいろ思うところがあろうとも、クリスマスだけは赦される日として、いい感じに物語が締めくくられます。クリスマスぐらいはという気持ちで、私も深く考えません(蛇足ですが、ジェレミー・ブレット主演の『シャーロック・ホームズ 青い紅玉』がクリスマスものとして私は大好きです)。

 

 

 

 

 

 そんなこんなで2022年も東京でクリスマスのミュージカルを観てきました。豊永阿紀さんとしてはアクトメントパークのミュージカルは2作品目。前回のブロードウェイも素晴らしかったですが、今回の『あの鐘の音と共に ~THE BELL~』、通称あの鐘も素晴らしかったです。

 

 まずはとにかく歌がすごい。主役のエレノアやベラはもちろんのこと、アンサンブルまで全員の歌がすごい。ミュージカルなのだから当然といえば当然かもしれませんが、それでも当たり前を超えて迫ってくる歌が素晴らしい。歌には力があると本当に実感させられます。ただ紙に書かれた文章だったら、陳腐すぎて説得力がなさそうな言葉でも、迫力ある歌声で歌われると納得してしまいます。

 

 そしてストーリーがわかりやすい。わかりやすいのに単純でもない。そこが面白い。さらに1回目と2回目の観劇で見え方がまったく変わってきます。そこも面白い。初見でも十分わかりやすく面白い作品で、なおかつ2回目以降の観劇でも見所がたくさんある、何度でも楽しめる作品となっています。

 

 初見時は観ながら疑問に思うことも出てきます。例えば、豊永阿紀さん演じるグレースが物語の本筋の蚊帳の外だったり、グレースが姉のクロエに比べて幼いなと思えたことだったりです。しかし最後まで観ると、疑問にもやはりそうなるべき理由があって、だからそうだったのかと腑に落ちました。

 

 私は豊永阿紀さんを観たくて東京まで行ったので、豊永さんを中心に観てしまうのですが、贔屓目で申し訳ないなと思いつつ豊永さんの歌に感動しました。歌い出しから場の空気が一瞬で変わるのがわかって、完全に歌で会場を支配していました。歌い出しに命を賭けているのではないかと思うほど、むしろ最初がうまくいけば後は流れに任せてなんとかなると思っているのか、豊永さんの歌い出しが素晴らしく、否応なく引き込まれてしまいました。

 

 観るとわかりますが、グレースは難しい役です。難しいからこそ、観る毎に彼女の周りの人への視線に少しずつ気付けてきます。言葉にはならないけれど、まなざしで語っているグレース。最後にはサントクレアの市民を見守るように、守り神の佇まいを見せていて、とても神々しいです。

 

 あるシーンにおいて、グレースの目が光っていました。特に近いわけでもないA席から見えるグレースは、その瞳の輝きも相まってまさに光でした。ベラがエレノアに言った「光のような目をしてる」は、まさしく私が見たグレースでもありました。私はよくアイドルを光に例えてしまいます。私達と同じ人間なのに、神格化しすぎるのはよくないのではないかと思いつつ、しかしそうとしか思えない場面に遭遇するのもアイドルです。推しとの距離感の寄せては返す波のような引き合いに溺れないように見定めないといけない。豊永さん演じるグレースがきらめくシーンは、いろいろな考えが頭をよぎりながら、なんとかその輝きを大切にしていけたらなと思える瞬間でした。

 

 グレースを見ていると、自然と思い入れが大きくなってくるのが、彼女と共にいるレナクとサラの幼い二人、そして姉のクロエです。

 

 レナクとサラはいつも子供らしい可愛さでいっぱい。愛らしいという言葉がこれほど似合う二人はいません。本当に可愛い。豊永さんは常日頃から子供達に頼られる近所のお姉さんになりたいと言っていて、そんな豊永さんにとって、レナクとサラのお姉さん的存在であるグレースは、彼女はまさになりたい自分だったのではないかと、そんな気がします。このトリオの場面がいつも楽しく、私は大好きです。

 

 クロエは醒めた表情の裏に妹グレースへの愛が満ちています。観劇を重ねるほどに、クロエとグレースの歌のシーンに胸打たれます。マグマのように見えない熱情に突き動かされて生きるクロエの真の目的が判明するシーンのかっこよさにしびれました。ハートウォーミングなクリスマス作品を想像していたので緊迫したサスペンスは予想外で、その驚きが最後の対決の場面のかっこよさをさらに際立たせていました。やっぱりクリスマスといったら泥棒、テロリスト、そして悪徳政治家ですよね。忘れてました。

 

 他にはやはりジェームズの存続感が素晴らしかった。ジェームズが作品に太く大きな背骨を与えていて、だからこそ主人公達の生き様が対照的に映えていたのだと思います。テニミュ俳優の安心感は伊達じゃないですね。

 

 



 

 作品自体の感想からはずれてしまいますが、アクトメントパークと出会って、推しが自分の好きなタイプの作品に出続けてくれることの幸せを私は噛み締めています。やっぱりあるじゃないですか。推しは好きだけど出演作品はnot for me なときも……。自分はミュージカルが好きですし、欧米を舞台としたアクトメントパークのミュージカルはまさに私好みなので、豊永さんがこうやって作品に出続けてくれることはとにかくうれしいです。

 

 素晴らしいミュージカルでした。年の瀬に観るに相応しい、忙しない日々で忘れてしまいそうな大切なことに、歌を通じて光を当てて気づかせてくれた作品でした。観劇後は、帰り道の新宿の雑踏を見つめる私の視線もいくぶん優しくなったと思います。心が温まる作品をありがとうございました。

 

 

 

 

 

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