私と豊永阿紀さんと『君のことが好きやけん』

 HKT48の10周年記念特別公演が11月26日と27日に開催されました。

 

 活動が10年続くことは本当にすごい。10年は相当長いですよ。長く活動を続けているアイドルの例に漏れず、HKTも周年公演への力の入れようがすごいです。そんな記念の公演で、たくさんの人に見てもらいたいと思っていても、劇場で公演することにこだわっていることも好感が持てます。

 

 なので当然公演のチケットは当たらず。これはHKTを長く見てきたファンのための公演なので、新規はチケットが当たらなくても文句は言えません。

 

 そうはいっても諦めきれない自分がいます。26日は最初こそ配信で見ていたんですが、居ても立っても居られず、途中で劇場に向かっていました。10周年の特別な企画として、公演写真を購入するとくじが引ける企画があり、当選すると最後のお見送りにだけは参加出来るとのこと。それに参加してみようと劇場に行きました。しかし到着するのが遅くて、既に当たりくじは全部出た後。のんびりし過ぎましたね。

 

 仕方なく隣のマークイズのスタバでフラペチーノを飲みながらDMM配信を見ました。

 

 26日の前期公演は期別で始まりました。詳細なレポは他の人に譲るとして、私は4期推しなので4期について述べたい。4期が歌ったのは『君のことが好きやけん』でした(タイトル合ってますか?)。私も大好きな曲です。何故ならSTU48で数えきれないほど聴いてきたから。そしてHKT48、特に豊永阿紀さんと関連して、とても思い入れが深い曲でもあります。

 

 突然過去に遡りますが、私が豊永阿紀さんのパフォーマンスを初めて意識したのが2019年のTIFスマイルガーデンでの『君のことが好きやけん』でした。現場ではなく録画で見ていて、曲の最後の場面でカメラに抜かれた豊永さんの表情が最高にかっこよかった。レンズのその先の画面の向こうにいる人をグッと離さない視線があった。その視線に私は惹きつけられて、君好きだけを繰り返し見続けた記憶があります。それまで文章や写真でしか知らなかった豊永さんの、アイドルとしての本当の姿を見れた気がして、それまでよりも豊永さんへの興味が高まりました。

 

 10周年公演の君好きは、私にあの夏を思い起こさせてくれました。結局TIFを見ても、実際に福岡に遠征するまでには至らなかったのですが、あの時があったから今があるのだと私は思っています。TIFの時と同じく、この公演でも最後はセンターに豊永さんがいて、カメラも豊永さんを捉えていて、豊永さんも真っ直ぐにカメラを見据えていて、その全ての組み合わせが奇跡を生んで私に感動を届けてきました。この1年間HKTを見続けてきた結果が、想像を超えて、さらに過去の記憶を呼び起こし私を揺さぶってくる。予想外の伏線回収の感がありました。

 

 このような節目の公演は、アイドルとファンが同じ過去を共有したことを確認するための時間でもあります。あんなことがあったね、こんなこともあったね。昔話に花が咲きます。そんな長く見続けてきたファンのための公演です。

 

 しかし私の君好きの思い出は、私の一方的な思い出です。豊永さんにとってはただの暑い夏の一曲でしかなかったのかもしれない。そこにまだ新規、たぶん今後もずっと新規だと自覚している自分の寂しさがある。こればかりは出会いのタイミングだから仕方ないと思っても、皆が懐古で盛り上がっている時に一歩引いてしまう自分がいます。見続けていけば、この劣等感も解消されることがあるのだろうか。

 

 豊永さんは『向日葵』も素晴らしかった。下野由貴さん上野遥さん上島楓さんという信頼し合っている4人で歌った『向日葵』は、新規ファンの私にもさすがに文脈がわかった上での素晴らしさがありました。上島楓さんが卒業するまでの残された時間、この瞬間を忘れられないものにしようと、互いを思いやる4人の息遣いが痛いほど伝わってきた。しかしそれでも演者や熱心なファンと私の間では、このパフォーマンスに対する思い入れの深さに差があるはずです。私はまだまだ知らないことが多すぎる。知るよりも先に、集った仲間が散り散りになっていく悲しみ。光よ離れないでくれと、叶わない願いを込めて見ていました。

 

 歌われる曲に対して、アイドルから見てもファンから見ても、同じ景色、同じ空気、同じ感情があるのは幸いです。いつか自分にもそういう記憶が生まれるのを願って、11年目のHKT48を見続けると思います。10周年おめでとうございます。